一般的に不動産の販売価格は売主の要望を反映した金額ですので、必ずしもこの価格で売買する必要はありません。
そこで投資物件を購入する際、買主は指値を決めて物件に申し込みをいれます。
指値とはこの金額で購入したいという買主の希望購入金額ですが、この金額設定は今後の不動産運用に少なからず影響を与えることになります。
つまりこの売主の価格をベースに、買主の希望価格をぶつけて、交渉の開始となるのです。
ただし売り出し価格がドンピシャの相場価格だったり、相場よりも割安の場合は、他にも買い手が出てきますので値引き交渉は難しくなります。
ここでは投資物件の適正な購入価格の算出方法や値引きの方法について考察していきたいと思います。
指値の決め方
では指値を決定する方法について、みていきましょう。
まず指値の基準となるのが相場価格です。そしてこの相場を調べる方法は主に2つあります。
まずひとつ目は、自分で調査する方法です。
大手不動産ポータルサイトなどを活用して、似たような物件の価格を調査することで相場をつまむ方法になります。
例えばホームズでは中古マンションの参考価格をマップ検索して調査できるサービスを提供してます。
ただしこの場合、売り出し価格や参考価格は調査できますが、実際の取引価格がわからない場合があります。
そんな時は成約価格をベースにした不動産取引の調査が可能な「レインズマーケットインフォメーション」は取引された戸建て、マンションの平米単価を調査することができますので便利かもしれません。
二つ目は、不動産屋に直接聞いてしまう方法です。
ただしこの場合、いきなり電話やメールで相場を教えてと言っても、相手も商売ですので必ずしも親身に調査してくれることはないでしょう。
やはり生きた情報を取得するには一度は不動産屋に足を運び、投資物件の購入を検討していることを伝え、自分の本気度を示すことが有効な手段になります。
後述しますが、この時の相談相手は投資物件の知識を持つ優れた営業マンにすることがベストになります。
家賃の調査
販売価格の相場感がつかめたら、次に調査するのが家賃相場になります。
すでに入居者がいるオーナーチェンジ物件であっても、家賃相場を把握しておく必要はあります。
なぜなら現在の入居者が退室した後、どれくらいの家賃設定ができて、どれくらいの収入を確保できるのかを知る必要があるからです。
またこれと同時に5年、10年、15年、20年経過したときの将来の家賃相場についても算出しておくことも重要です。
利回りの算出(表面・実質)
相場感を掴んだら購入価格と設定家賃の目安を算出して、利回りを算出してみましょう。利回りの算出は下記の計算を参考して下さい。
年間家賃÷物件価格(×100)=利回り(%)
例えば500万円で物件を購入して、6万円の家賃であれば「72万円÷500万円×100=14.4%」となります。
これは表面利回りと呼ばれるものになります。
利回りには表面利回り(グロス)と実質利回り(ネット)の2つの考え方があります。
ネット上で見かける物件情報に掲載されているのは、この「表面利回り」となりますが、実際に不動産投資を行う場合、実質利回りで計算しなくては意味がありません。
実質利回りとは、管理修繕費用や固定資産税といった経費を差し引いた金額を元に算出します。下記が計算方法です。
(年間家賃-諸経費)÷物件価格(×100)=利回り(%)
例えば500万円で物件を購入して、6万円の家賃で経費が12万円あれば「(72万円-12万円)÷500万円×100=12%」となります。
さらに言えば、これは満室稼働での計算ですので、想定稼働率で算出することでより現実に近い収益を算出することできるでしょう。
想定稼働率は地域で異なってくるため、全国平均を用いるのではなくその地域の物件の稼働率を元に算出すると良いでしょう。下記が計算方法です。
(年間家賃-諸経費)÷物件価格(×100)×稼働率
例えば先程の物件を東京都江東区と想定した場合、空室率が7.4%(稼働率は92.6%)ですので、
(72万円-12万円)÷500万円×92.6%×100=11%
稼働率の算出はホームズの賃貸用住宅の空き家率一覧を参考にしました。
不動産取得諸費用
これで物件購入後の具体的な収益の計算ができました。
しかしもう一つだけ追加したい項目があります。それは不動産を取得するときにかかる諸費用です。
これを含めて購入価格とするのが本来の利回りを計算するには必須になります。
この諸費用について一般的なものを下記にまとめてみましたのご御覧ください。
- 登記費用
- 税金(印紙税・登録免許税・不動産取得税)
- 仲介手数料
- ローン費用(印紙、事務手数料・保証料)
- リフォーム費用
これらすべての費用を考慮して算出して、ようやく物件価格が決定されるのです。
値引きの交渉方法
では指値について考えていきましょう。
その前に、上記に基づき算出した購入価格と販売価格に結構な差があるのに驚くかもしれません。
これは購入価格は買主側が有利になるような設定で、販売価格は売主側の要望する価格ですから当然の結果となります。
ここからが売主との勝負になるのですが、闇雲に自分の希望金額を伝えるだけでは交渉になりません。
そこでどうしてこの金額になったのかの根拠を提示することになります。
まず最初に行うのが、物件側の問題点を指摘する方法です。例えば修繕費用、共有スペースの問題点などを指摘して値引き交渉を行います。
ただし本当に問題ないが場合は、単なる物件のあら探しになってしまいますのでご注意下さい。
次に自分の状況を出して交渉する方法になります。例えば、融資や自己資金など金銭的な事情を説明してこれ以上の支払いは難しいと訴える方法です。
しかし売主にとってどちらの方法にも何のメリットも感じない場合、値引きに応じることはないでしょう。
つまり売主にメリット感じさせる交渉をしなくては、値引きは難しいのです。
では値引きに応じるのはどういったケースが考えられるでしょうか?
不動産売買では、取引終了後も売主には瑕疵担保責任があります。つまり販売後も売主と買主は何かしらの交流を持つ機会が考えられます。
仮に交渉のときに買主に悪い印象を持てば、販売後に面倒が起きるかもと余計な想像をしかねません。そうなれば値引きどころか話自体が立ち消えになることもあり得るのです。
逆に良い印象を買主に持てば、多少安くしてもこの人に売れば安心して取引できそうだと判断することがあります。
これは自分が売主の立場に立って、どうすれば気持ちよく取引ができるかを考えれば良いのかもしれません。
とは言え、実際に売主と買主が対面で話し合う気かはそんなにありませんので、現実的にはなかなか難しいかもしれません。
不動産会社との付き合い
では一番良い方法はなんでしょうか?
それは優秀な営業マンを探し出し、相手にも嫌われずに自分に有利な交渉をしてもらう方法が考えれます。
しかしこの方法には問題点もあります。
それは担当者とある程度人間関係を構築していないと難しいため、いきなり不動産会社にいってお願いしてもできないかもしれません。
では具体的にはどうすればよいか?
まず何社かに問い合わせをして、営業マンに買う意志があることを伝えて何度かやり取りをしてみましょう。そして提案力、行動力や相性などから自分が良いと思う営業マンを探し出してみて下さい。
多少の時間と労力はかかりますが、費用はかかりませんので、面倒がらずに行動することが大切です。
また不動産セミナーに参加して、物件を提案して貰う方法もよいかもしれません。
このような営業マンとの出会いを作ることがスタートになりますので、色々と試してみることをお勧めします。
物件提案から価格交渉、価格設定などすべてあなたにメリットのある方法をコーディネートしてくれる優秀な営業マンがいれば、これほど心強いものはありません。
そして、生涯とはいいませんが長い付き合いのできる営業マンを見つけることが、最終的には良い物件を良い条件で購入できることにつながるのではないしょうか?